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2023.09.26

中学生清流展を担当して 末永忠宏

 中学生清流展は令和5年度、松村外次郎記念庄川美術館から砺波市美術館へと引き継がれ、企画展示室で開催されました。社会情勢の変化により、庄川美術館の存続は難しいと判断が下され、昨年度で企画展開催を取り止め、また本年度末をもって美術館を閉館することが決まったためです。

 展示に先駆けて砺波地区中学校文化連盟との共催で砺波地区中学生写生会を行いました。盛夏を思わせる日差しの降り注ぐ6月、庄川水記念公園には14校252名の体操服姿の中学生の姿がありました。

 生徒達はすぐさま、場所を決め画板を立て、描き始めます。庄川峡のスケール感を肌で感じながら、それぞれの定めた対象をデッサンし、水彩絵具で着彩。時々、部の顧問や講師の指導を受けながら、一筆一筆、制作を進めます。

 

 以前、庄川美術館でこの展覧会を担当したときは新型コロナウイルス感染拡大と重なり中止となったため、実質、今回が初めての担当でした。そのせいもあり、気負いがあったかもしれません。なにしろ写生会当日は気温27度、正直、つらくなる程の蒸し暑さだったのですが、終わりまでバテずに立ち歩けていたのですから。

 

 写生会後、完成した絵は、審査のため応募作品として学校から美術館に提出されます。今年度は特別支援学校2校を加えた16校、246点に対し厳正な審査が行われ、入賞20点、入選80点、合計100点が決定し、中学生清流展に展示されました。

 

 本展は“生徒を主役に”というテーマで、テープカットは受賞した20人の中学生が担うことになっていました。ところが、肝心のイメージが結びつかず悶々とした数日を過ごしてしまいました。


 開幕式があと数日と迫ったある日、館長より、テープカットをする人に半円形状に立ってもらい、各自、左手でテープを持ってもらうのはどうかと提案していただきました。
 現場確認の結果、テープは半円状から直線状に、2本のテープを前後に流す形式へと変更しました。

 特別に清流をイメージしたブルーのテープを準備し、原稿を読み合わせ、リハーサルを繰り返して、迎えた本番はというと…?

 

 ご覧のとおり、受賞者と来賓が一緒になり、入選者一同が後ろで見守る中、めでたく幕開きとなりました!
カットしたテープは記念に持ち帰っていただけるようにしました。
 展示場内での撮影もOKです。展示会場でご家族の祝福を受けながら記念撮影に応じる中学生の顔は、一様にほころんでいました。

 こうして始まった中学生清流展は、8月11日から8月27日まで開催し、1532人にご覧いただきました。


 郷土のよさや美しさを、感受性豊かな年代としての中学生が、水彩という柔軟で変化に富む画材を用いて仕上げ、美術館での展示を通して人びとが共有しあう――。
 「生徒を主役に」を前面に打ち出した今回の中学生清流展は、美術館から生徒、地域の皆様へ、この地に在る、かけがえのない価値をつなげていく取り組みであったと思います。