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2026.01.16

「加賀谷 武 追悼展ー空間に挑む 」加賀谷さんを偲んで 杉本 積

 私が加賀谷 武さんと知り合ったのは、1998年当館の市民ギャラリーで開かれた「加賀谷 武・川井昭夫展」の時に展示のお手伝いをしたのが最初だったと記憶しています。当時お二人の事は全く存じ上げあげていませんでしたが、遡ること8年前にアートスペース砺波で開かれた「アートイベント砺波’90」に続いて2回目の二人展だったことを後で知りました。それから、シロタ画廊での個展などに足を運ぶようになり親しくさせていただきました。

 2008年に東京から故郷の小矢部市に転居され、翌年には当館で大規模な個展を開催することが決まります。私は、この展覧会の担当になり準備期間の6月から7月にかけて34回、小矢部市蓮沼にある加賀谷さんのご実家の倉庫へ作品調査に赴き出品作品を選定しました。数年前から野外でロープを使ったインスタレーション作品を発表しておられましたが、この展覧会の時に美術館の屋上から四季彩館の屋上にロープを渡せないかと提案を受け驚きました。この案を実現すべく市道にロープを張る許可申請や、制作時に道路封鎖する警察署への許可申請に奔走しました。その結果、無事成功したことが今となっては懐かしい思い出となっています。この展覧会以降も当館の企画展によく奥様と二人で足をお運びいただきました。

 晩年は、身の回りの自然物や人工物を金色に塗りインスタレーションを行う「Gold Space」シリーズを展開されており、まだまだ創作意欲が旺盛なその矢先、20247月に逝去されました。その後、一周忌に加賀谷さんのご自宅を訪問した際、奥様から亡くなる数日前までスケッチブックに描いていたドローイングを見せていただく機会がありました。形になる前の線描で紙面が埋め尽くされていました。私は、そこに作家が創作にかける強い執念を垣間見たと同時に、最後まで現役だった事に驚愕しました。

 加賀谷さんが生涯かけて創作し、作品を通して私たちに問うた空間の存在をこの追悼展から感じていただければと思います。