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2026.04.06
今回のフェア特別展では、染色家・絵本作家のたじまゆきひこ(田島征彦)さんの個展を開催いたします。たじまさんには、昨年秋の「ブラチスラバからやってきた!世界の絵本パレード」で、『なきむしせいとく 沖縄戦にまきこまれた少年の物語』(童心社)の原画を出品いただきました。型絵染による鮮烈な印象が記憶に新しい方も多いのではないでしょうか。

さて、絵本作家として知られるたじまさんですが、今も染色家として作品を発表し続けています。本稿では、たじまさんの染色家人生の始まりを少しばかりご紹介します。
たじまさんは、1940年、大阪府堺市に生まれました。戦後は父の故郷である高知県の山村に一家で移住し、幼少期を豊かな自然の中で過ごしました。双子の弟・田島征三(たしませいぞう)さん(絵本作家・美術家)とともに、幼い頃から絵に興味があり、手に入る画材が少ない中、工夫して絵を描いていました。しかし、たじまさんは、生まれて間もない頃から身体が弱く、何事も不器用で、思い通りにならない自分への怒りで泣き叫ぶ日々でした。
幼い頃から画家になるという決意はあったものの、美大受験も弟より一足遅く、今から受験できるのは京都市立美術大学(現在の京都市立芸術大学)染織図案科しかないと教師に諭されました。無事に入学するも、学生時代は染織に興味がないまま過ごし、授業に出席せず「劇団美大アトリエ座」に入り、裏方として舞台美術に明け暮れていました。そして、そこで出会った先輩たちに憧れ、前衛美術に傾倒し、染色の基礎的なことも学ばないまま卒業することになりました。

しかし、このまま卒業し就職することになれば、思うように作品制作ができなると焦りを感じ、大学に残るには専攻科に進学するしかないと、ようやく染色と向き合うことになりました。学生や大学から反発はあったものの、たじまさんは無事に専攻科へ進学、本格的に染色の技法で制作することになり、ここからがアーティストへの第一歩となります。先輩の誘いで、京都の若手染色家による、前衛的なグループ「染色集団∞(無限大)」に参加し、活動の幅を広げていきました。持ち前の頑固な性格、既存の権威に反発する姿勢、そして、荒々しくも自然豊かな高知での生活が結びつき、自然への畏敬や土俗的な信仰を表現することに繋がりました。
本展では、伝統的な「型絵染」を用いながら、シルクスクリーンを使用した作品や、白黒型染のみの作品、10mを超える大型作品など、新しい可能性に挑戦し続け、自己表現を貫いたダイナミックな染色作品や、数年をかけて取材を行った『祇園祭』(童心社)、淡路島を舞台とした『ふしぎなともだち』(くもん出版)、人気シリーズの最新作『花見じゃそうべえ』(童心社)などの人々のパワーあふれる物語から社会や人間の本質に迫る物語の多岐にわたる絵本原画を展示し、たじまゆきひこの世界を紹介します。